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三昧箱

小説・文章などを置いています。迷走中。

SS「皮膚」

 皮膚がちりちりしている。外気に触れている部分の肌が痛い。手袋をしてくるべきだったと思い、コートのポケットに両手を隠す。

 ……耐えられない。
 青年は自分の身体が傾いでいくのが解った。かなりよろけたと感じたが、周りの人波は相変わらず青年には気付かず、淡々としたリズムで進んでいる。ざわめき、嬌声、そういったものはリズムを乱さない。乱すだけの力も持たない、笑い声。何もかもが力を持たない。
 そして人々は口を塞ぐだろう。しかし、何時? ただ沈黙のみが人間に残されていると、何時気付くのだろう?
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/05/27(土) 18:15:39|
  2. SS
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SS「声釣り」

 釣り堀には、たくさんの釣り人が集まっていた。
 釣り人はみんな真剣な顔つきで、巨大な真っ黒い箱の中に釣り糸を垂らしている。
 どこにでもある釣りの風景だが、ただひとつ違うのは、釣り人の横に置かれている物はバケツではなく、小型のテープレコーダーだということだろう。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/05/17(水) 13:53:16|
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SS「検閲」

 事情はよく分からないんだが。と、ボスは切り出した。
 オレ達は額をつき合わせ、じっと続きの言葉を待った。鉄格子が填め込まれた室内は暗く、外の様子はうかがえない。
「……何でも、東の仲間が、大勢、ヤられたらしい」
「なぜ? 理由は!? オレ達が何をしたって言うんだ?」
 いつもは気の弱いセイランが、珍しく叫ぶ。
「だから、分からんと言っただろうが」
 語気を荒げ、ボスが石を蹴った。機嫌が悪い時、ボスがよくやる癖だ。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/05/08(月) 00:01:45|
  2. SS
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